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J-VER オホーツク知床 オシンコシンの森 プロジェクト

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知床を有する斜里町にある都市との交流、
林業の振興を目的としたNPOです

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知床「オシンコシンの森」を舞台に再出発しました

 「オシンコシンの森」は、知床の代表的景勝地である「オシンコシンの滝」の上に広がる広さ73.6 haの森です。NPOサニーサイド・オホーツクの理事長が所有する民有林ですが、オシンコシンの滝の直近という場所にあるだけに活用が難しく、美林を保つ責任がありながらも、この森を維持する負担が重くのしかかっていたことも、J-VERに着目する動機となりました。

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知床の森を守るため、
知床での林業を守るため
私たちは活動します

こうしたことから当NPO法人では、環境省のカーボンオフセットクレジットJ-VERに着目いたしました。J-VERは、適切な森林管理によって樹木が成長しCO2の吸収量が増大した分をオフセットクレジットとして認定し、経済的な価値を与える国の制度です。
 知床の森林オーナーが歯を食いしばって自らの森を守るのは、将来に木を売って収入を得ることだけが目的ではありません。
 知床の自然を守りたい、豊かな森を後世に残したいという思いです。適切な森林管理が経済的な価値として認められるJ-VERは、こうしたオーナーの思いに報いることのできる唯一の制度です。
 私たちは、J-VERクレジットを通して、知床の森づくりを応援し、よって知床の森を守ります。

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21世紀の社会目標「低炭素化社会の実現」

 2009年、わが国は、1990年対比で温室効果ガスの25%削減を国際公約としました。前政権では6%を目標としていたことから比較すると大幅な削減量の増加です。この国際公約を実現する切り札として、鳩山政権は温室効果ガスの排出量取引を日本に導入することとしました。
 排出量取引の先進地であるEUでは、08年に約8.4兆円もの取引が発生しており、日本でも今後巨大な市場になっていくと考えられます。これに対応するように日本でも排出量取引の枠組み整備が急速に進められ、2008年11月に環境省によって「オフセット・クレジット(J-VER)制度」が創設されました。さらに2010年、排出権取引や環境税を盛り込んだ地球温暖化防止対策基本法の成立が目指されています。
 地球温暖化の主因とされる温室効果ガスの1つである二酸化炭素の最終的な排出量が少ない産業・生活システムを構築した社会、すなわち「低炭素化社会」の実現は、21世紀を生きる私たちが目指すべき社会目標となりました。

環境によって地域を振興する新たな“しくみ”づくり

 一方国内では公共事業に依存してきた地域経済が、事業縮減によって疲弊の度を増しています。
 公共事業は地域に対する基盤整備の意味の他に、都市に偏りがちな富を地域に再分配する役割がありました。しかし800兆と言われる国の財政赤字の中で、従来型の公共事業による富の再分配は難しくなっています。それだけに、公共事業への依存度の高い北海道が受けた打撃は深刻です。
 この北海道の将来について鳩山由紀夫首相は本年年頭に「公共事業依存体質から脱却し、環境と観光に重点を置く産業構造に転換する必要性を強調(平成21年1月2日・道新)」しました。
 環境と観光、環境と地域をどのように結びつけるのか。環境によって地域再生をどのように行うのか。その具体的な道筋が描けなければ、美しいスローガンは絵に描いた餅におわり、適正に富の再分配が行われなければ均衡ある国土の発展は失われてしまいます。
 環境と観光を、公共事業に変わる地域経済の柱に位置づけるのならば、それらを結びつける新たな“しくみ”が無ければなりません。今、私たちが行わなければならないのは、地域での新たな“しくみ”づくりです。

サニーサイド・オホーツクの再生

 私たちのNPO法人サニーサイド・オホーツクは、2002年に「グリーンツーリズムの展開及び自然を教材とした社会教育の進展と人間回復の機会提供などを通して地域振興」することを目的として結成されました。
 エルダーホステル協会の農村体験ツアーを受け入れを主な事業に活動を続けてきましたが、2005年に活動実務を担っていた中心メンバーの失踪を契機に活動が停滞し、NPO法人として組織の再構築が求められていました。
 ところでNPOサニーサイド・オホーツクの事業としてオホーツクの自然を生かした自然体験プログラムの実施があり、これの舞台としてNPO法人理事が知床半島の世界自然遺産地域に近接した場所に所有する73.6ヘクタールの山林、通称「オシンコシンの森」の活用が模索されていました。
 サニーサイド・オホーツクの組織を再編するならば、世界自然遺産に隣接するという恵まれた条件を持つこのフィールドの活用が焦点になると考えられていました。

「オシンコシンの森」を舞台にした新たな観光創造

 この「オシンコシンの森」は知床世界遺産地域と同様の手つかずの自然が残されている一方、他の知床世界遺産地域と同様にシカの食害が激しく、適切な森林管理が求められていました。
 一方で森林は二酸化炭素の吸収源として期待されています。京都議定書の実行計画によれば国内の温室効果ガスの3分の2を国内林によって吸収するとしています。なかでも、間伐によって樹木を大きく育て二酸化炭素の吸収量を増やす森林間伐プロジェクトは、J-VERのなかでも主要なプロジェクトに位置づけられています。
 ここで森林というキーワードに注目するとき、排出量取引の活発化による温暖化効果ガス削減というマクロな状況と、「オシンコシンの森」の再生によって事業の再構築に取り組みたいNPOサニーサイド・オホーツクというミクロな状況がぴったりと重なります。 
 ここから、新生NPOサニーサイド・オホーツクの事業目的に、「カーボンオフセットの推進による環境保全」を加え、森林管理によるカーボンオフセットクレジットの供給と自然体験プログラムを合わせた新たな事業を想起するものです。
 知床世界自然遺産「オシンコシンの森」というシンボルを持つNPOサニーサイド・オホーツクは、知床世界遺産の環境保全そして自然環境教育という他の事業体が持ち得ない特出した価値をカーボンオフセットに取り組む企業・事業者に提供できます。
 こうしたことからカーボンオフセットとグリーンツーリズムを組み合わせた新しい事業の創出、ひいては公共事業が縮減していく時代において、新たな地域振興モデル創出が可能であると考えます。

「新たな公」の担い手として

 地方に広がる森林から生み出されるクレジットを都市の大企業が買い取るという排出量取引は、 21世紀型の都市から地方への富の再分配システムの側面を持っています。
20世紀型の富の再分配が、行政を通して税金によって行われてきたとするならば、21世紀型の富の再分配は、環境をテーマとして市場を通して行われる。逆に言えば、市場のプレイヤーにならなければ地方は富の分配に与れない時代が始まったと言えるのではないでしょうか。
 明治2年の開拓使設置以来130年、国策という強大な力によって進められてきた北海道開拓は、官依存、行政依存の体質を北海道に住むものに根深く植え付けてしまいました。
 21世紀における地域振興の担い手は、環境をテーマに都市と地域、市場と自然を結びつける新たなモデルを創造する主体は、ことにこの北海道においては、官依存、行政依存の体質から脱皮した、開拓者精神あふれる民を中心とする「新たな公」でなければなりません。
 こうしたことから、私たちサニーサイド・オホーツクは、民間の力でオホーツクの豊かな森からカーボンオフセットクレジットを発行し、環境と観光を結びつける新たな観光創造、地域振興を目指します。